2012年7月23日 林 季一郎

分断された街

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8:20に起き、9:00まで1人カフェで今日の行き先を再チェック。車に戻り、市街地を出る。まずは、ここから5キロ程南下したところにあるセルビア人地区へ向う。ここは首都プリスティアから最も近いセルビア人地区で、話によれば周りをアルバニア地区に囲まれ、出ることもままならない状況で、極度の貧困地帯だという。

だからてっきり周りを封鎖されていて、国連軍の検問でもあるのかと思いきやそうでもないようだ。幹線道路を進んでいると、何時の間にか目的地の町に入っていた。特に何かが変わったわけでもない。それでもちらほらとセルビア国旗が掲げられているのを見ると、確かにセルビア人地区のようだ。念のため、車を降りて近くで庭作業をしていた男たちにさりげなく聞いてみた。

「ここに行きたいんだけどどういけばいいんですか?」

「それならあっちだよ」

「有難うございます!ちなみにここってセルビア地区ですよね?皆さんもセルビア人ですか?」

その瞬間、男性の表情がくもった。先ほどまでの明るい調子は影を潜め、少しうつむきながら小声で「そうです」と。一言で、もうそれ以上聞く勇気を失った。無理して作った笑顔で握手をしてそそくさと車に戻った。なんだか急にここが場違いに思えてきた、もう町を出よう。そのまま、今度は北上して次の目的地ミトロヴィツァを目指す。

「ヘーイ!」横から声が飛んできた。振り向くと、横に並んだ白いバンから半身を乗り出したおっさんが写真撮ってもいいか~と言っている。適当にポーズをとってあげると、車は後方に下がっていった。しばらくすると、再び追いついてきたバンからまたしてもおっさんが威勢のいい声で、「ヘーイ!ガーイズ!アー ユー マレーシア?」何だそれは、新手のギャグか…少なくてもチャイニーズだろ、そこは

まぁいい、悪い人じゃなさそうだし。とりあえず渾身の苦笑いをおみまいしとく。さらに15分くらい走った頃だろうか。小さいスーパーの前を通り過ぎようとすると、突然道路脇から誰かがこっちに向かって叫んでる。おいおい今度はなんだ?よーく見て見ると、またさっきのおっさんだ。しかも今度は手にジュースを二本持ってる。どうやら俺らにくれようとして、先回りして買ってくれてたらしい。何という(笑)とりあえず車を止めて有難く頂戴する。

さぁ再出発だ。12:00頃ミトロヴィツァの町に入った。ここは、セルビア人とアルバニア人が北と南に分離されて住んでいるのだ。両者の間には川が流れていて、橋は土砂が積み上げられ封鎖されていた。さらに、フランス軍がそこを守っていた。しかたなく、遠回りをして北へ入った。簡単な検問を通り中に入ると、先ほどまでそこら中に上がっていたアルバニアとコソボの国旗が消え、代わってセルビアの国旗が至る所で目に入る。あまりにも違う。お互いにここが自分たちの領地だと主張しているのだろう。ここでは今でも両者の衝突が度々起こっているという。

街を北へ向けたところに、2010年までロマの難民の人達が生活していた難民キャンプ跡があった。1999の紛争は、単にセルビア人とアルバニア人の問題ではなかったという。その裏では、両者から迫害を受けたロマの人達がいて、彼らは容赦なく家を追われた。そして10年以上もの間、この劣悪な場所での生活を余儀なくされ、ようやく一昨年新たな場所へと移されたそうだ。今は何も残っていない。まだ何かしらの痕跡があるのかと思ってたけど、家屋も壊され不自然な更地が広がっているだけだ。

数枚だけ写真を撮ると、また北上する。今度はセルビアへ抜けるのだ。途中、ところどころに外国の部隊が検問所をつくっていて、戦車や装甲車が至る所で目に付く。映画の中に来たみたいだ。

15:00頃セルビア国境につく。

しかし、恐れていたとおり、アルバニアからコソボに入った俺らは通過出来ないという。彼らにしてみれば、存在してないはずのコソボという国のスタンプがパスポートに押されてるのがまずいらしい。頑張ってお願いしてみるが駄目だ。最後の手段でお金で解決できないか聞くも、そういう問題ではないらしい。

ただ、予想外にも彼らの対応はすごく丁寧で、いかにも申し訳なさそうにしている。しょうがない、引き返して、モンテネグロに抜けよう。 山岳地帯を抜け、19:00頃西からモンテネグロに入り、近くの町で飯を済ませ今日は寝ることに。この国、mount(山)negro(黒い)と言われるだけあって確かに深い森に覆われた山ばかりだ。標高が高いから涼しい、今日はよく寝れそうだ。

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