2013年8月26日 林 季一郎

初心者がワイナポトシ山(6088m)に挑戦!登頂編

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深夜1時、ついにワイナポトシ登山の登頂へのアタックの時間になりました。果たして登頂できるのかな!?

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初めての方はこちらから【始まりの物語】 【旅のあらすじ】
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◆8月18日 午前 00:05

ガサガサという音で目が覚めた。

少し目を開けて周りの様子を伺うと

すでに皆が準備に取り掛かってる。

 

「えっ、嘘だろ!まだそんな時間じゃないだろ!」

と思って腕時計を確認すると、確かに深夜12時、準備開始の時間だ。

 

「マジでこれから登るのかよ。だって、めっちゃ暗いし、寒いよ…泣」

 

一瞬にして絶望のどん底に突き落とされる。

あれだけワクワクしてた登頂アタックも、実際その時になるとこんなにも憂鬱なのか…

マジで、無かったことにしたい気分。

 

しかし、来てしまったもんはしょうがない。

そう、俺が登れずして誰が登る!だったぜ…

さぁ、戦闘モードに入ろう。闘いだーー!!

 

急いで支度をする。

と言っても、着替え持参なんて知らなかったから

昨日のままの恰好だよ。

 

みんなが一階に下りて、靴やら、ペア同士を繋ぐ謎のベルトやらを装着しだした。

やばい、俺も急がなきゃ!でも、これどうやってつけるんだよ!

ってかこれ何なんだよーー!誰か助けてー!

 

そこに我らが現地人ガイド「イクマン」さん登場!(こっち向いてる人↓)

 

もう、俺、座ってるだけで、あとは為されるがままにあれやこれやと装着されていく。

何とか自力で試みた靴の装着も、「違うよ~」ということでやり直し。

まさに、赤ちゃんのように為されるがまま。とほほ..でもありがとう。

 

 

もちろん、鉄人ゴードンは自力でちゃちゃっと装着完了!

しかも、用具のほとんどが自分の物という気合いの入りっぷり。

迷惑は絶対かけないからね、ゴードン!

 

そして、マテ茶とカチコチになったパンを腹に押し込んでいると

ガイドのイクマンが「バモス!(さぁ、いこう!)」と外に促してくる。

 

ついに来たか。

 

すると、おもむろにゴードンが拳を突き出してきた。

ばかやろう…これで絶対登らなきゃ行けなくなったじゃねぇか。

おう、とこっちも拳を返す。

 

 

外に出てみると、思いのほか明るいことに気が付いた。

上空を見上げると、月の光が、ワイナポトシ山の輪郭をくっきり浮かび上がらせていた。

一瞬、その威容に圧倒されそうになる。

 

そして、今いるハイキャンプから山肌を上の方に向かって

点々と明かりが続いているのが見える。

すでに何組かが出発してるようだ。

 

どうやら、もうどこの旅行会社とかは関係なく

ペアごとに自由に頂上を目指すらしい。

そして、俺らの番がきた。

 

あまりに唐突なので、逆に緊張せずに

言われるがままにスタート地点へと移動できた。

でも、ヘッドランプのバッテリーは持つかどうかだけが心配になってきた。

まぁ、この際どうでもいい。

 

スタート地点までは、ハイキャンプから100m程岩場を通る。

だから、そこまでは、雪用の靴裏のトゲトゲとピッケル(斧)を手で持っていく。

 

そして、そこでもまたイクマンに為されるがままに、トゲトゲを装着してもらう。

さらに、3人の体を繋ぐロープも装着。これで戦闘準備は全て完了らしい。

 

 

イクマン:「さぁ、行こう!」

 

 

え、うそでしょ…

 

で、この靴はどうやって使うの?

 

で、この斧みたいのは何に使うんだ?

 

 

何も説明ないんですか~~~!!!!

 

 

さすがに焦って、鉄人ゴードンに聞いてみた。

 

俺:「この靴で歩く時のアドバイスは?この斧は?」

丁寧に歩き方、斧の持ち方、使い方を説明してくれるゴードン。

 

よし、これで行ける。

気分はもう、植村直己である。

 

そして午前1:30、記念すべき第一歩目を踏み出す。

あっ!とコケそうになる。

おいおい、この靴めちゃくちゃ歩きづらいぞ…

 

しかも、意味の分からないことに

スタートから傾斜30°はあるんじゃないかという急斜面だ。

そこを暗い中、いきなりぶっつけ本場なのである。ふむ。

 

もちろん、転げ落ちたら結構下まで落ちて死ぬだろう。

前を行くガイドのイクマンと俺の後ろの鉄人ゴードンとロープで結んであるものの

果たして、本当に落ちたら2人で支えられるものなんだろうか。かなり怪しいところだ。

 

一歩一歩。

呼吸に合わせながら

地を這うようにゆっくりと足を前に運んでいく。

 

すぅ~~(吸って)、はぁ~~(吐いて)のワンセットごとにたった一歩

そのペースでも、心臓の鼓動が早くなるのを感じる。

ダウンも着込んだせいか、思いのほか寒くはないのだけが救いだ。

 

慣れてくれば呼吸も案外ラクなことに気付いた。

頭痛もない。昨日の疲れもない。これは行けるぞ。

 

 

頂上までは、早くて5時間。

今出れば、ちょうど6:45の日の出に間に合うというわけだ。

しかし、日の出をすぎると次第に雪が溶けだしてきて危険になる。

だから、早くいかないと、途中で引き返さざるを得なくなるという。

 

先を急ごう。

 

気持ちはがんがんに。呼吸はゆっくりと。

1時間ほど行ったところで、休憩になった。

暗い中を、下を向いて歩いているので、

どんな所を通っているのかもよく分からない。

 

それに、山肌が大きく起伏しているので、向こうが見えない。

この先どれだけの距離があるのだろうか。

ただただ、前を歩くイクマンの後姿を追う。

 

 

10分ほどでまた歩き始める。

少し傾斜が緩くなったと思っても

すぐまた急こう配になる。

 

急になると横歩きのような形になる。

プラスチックのブーツは、足首がそんなに曲がらないのだ。

そして、これがまた辛い。

 

少しずつ体も冷えてきた。

こんなに着込んで、心臓もバクバクなのに

それでも、身体が熱くならないのが不思議なくらいだ。

 

 

スタートしてから2時間。二度目の休憩になった。

ゴードンとイクマンはそこら辺で立ちションしてるが

俺は、寒くて尿意すらない。

 

ここまでで標高5500m

まだ半分も来ていないのか…

 

上を見上げても、頂きはまだまだ遥か上の方。

「これるものなら来い」とばかりの威圧感で俺らを見下ろす。

恐ろしいところに来てしまった…

 

さらに、進む。

 

 

道幅が徐々に狭くなってきた。

狭い所では20cmくらいしかない。

 

斜面に体をもたれながら、

体操の平均台を渡るように、

足を縦に並べながら少しずつ進む。

 

それでも、時々、崩れてたり、氷に亀裂が入ってる箇所があるので

そこは思い切ってジャ~ンプ!

と同時にかイクマンがザイル(互いにを繋いだロープ)をグイっと引っ張ってくれる。

 

 

3時間半が経過した。

 

それまでずら~っと続いていた他のグループが

ポツンポツンとしか視界に入らなくなった。

皆疲れてきたのか、進むペースがバラバラになったのだろう。

 

いや、人のことを心配している場合ではななくなってきた。

手の感覚は無くなり、心臓の鼓動もさらに激しくなる。

体力的には大丈夫なのだが、意識が若干朦朧としてきた。

 

そんな時に、試練はやってきた。

 

「えっーーーーー!!!!!!」

 

どうも前をいくグループが立ち止ってると思ったら、

なんと、傾斜50°はあろうかという、氷の壁が目の前に現れた。

 

おいおい、こんなのどうやって登るんだよ…と唖然としてると、

イクマンが「ピッケル(斧)をだね、こう持ってね、ザクッとやって登るんだ!」

と、さも当然なように言い放った。(そんなに簡単に言うなよな…)

 

と同時に、何故か前で休んでるグループを抜かして一気に登りだした!

(おいーー!何故そんなに急ぐ~~)

 

と言う間もなく、ロープで繋がった俺の体も

強制的に壁に引き寄せられてくーー!!

 

もはやこうなったら気合いで登るしかない。

少し上の方に斧をぶっさしては

一歩また一歩と這い上がる。

 

先程とは比較にならないほど

ドキ!ドキ!ドキ!ドキー!と鼓動が早くなる。

 

そして、10m程を無事這いあがった。

さらに意識が朦朧としてきた。

さすがのゴードンも辛そうだ。

 

負けてられない。

意地でそのまま歩き続ける。

 

それでも歩くスピードはガクッと落ちた。

足が言うことをきかなくなり、身体がふらふらと倒れそうになる。

腹も減って、さっきからずっとぐぅぐぅ鳴ってる。

 

 

出発から3時間半。

5900m地点での4度目の休憩では

さすがに3人とも座り込んでしまった。

 

 

イクマン曰く

「ここまでのペースはかなり順調だよー。いいね!」

確かに前を行く数グループ以外は

後続も含めて、いつの間にか見えなくなってる。

 

しかし、そこからが地獄…

 

頂きはもう近いはずなのに

その周りをぐるぐる回ってるだけで、

なかなか近づかない。

 

そんな時に、まさかの氷の壁が再び現れた…

 

さすがにこれはヤバいでしょ…

だって30mくらいはあるよ。

 

先ほどと同じ様に、

ピッケルを氷に突き刺しながら登るのだが

如何せんもう手の感覚がなくて力が入らない。

 

弱々しくピッケルを振り下ろしたところで

歯が立たず、弾き返されてしまう。

 

もう、やけくそだ!

少し段差になってるところを手で強引によじ登る!

下を見ると、尋常でない高さだ…

 

あぁ、やばい…

一瞬からだが浮きそうになる。

 

 

その時だ…

 

 

 

 

「頂上だ!」

 

 

 

ついに、見えたのだ。

まだ、100mくらいはあるものの、終わりが視界に入った。

もう、それより上には何もない。

 

 

 

「あ、空が…」

 

 

 

それまで気が付かなかったが、

空が鮮やかな青に染まり始めていた。

夜が明けたのだ。

 

 

それに下からだと、ただ一点の頂点に見えたのが

どうもいくつか頂きがあって、それが稜線(尾根)で繋がっていたのだ。

そして今、その片方の頂点に出た。

 

あとは、この細い稜線を向こうに渡るだけ。

それですべての苦しみから解放される。

 

 

しかし、この稜線の幅なんなんだ…

30cmしかないぞ、しかもこれまでと違って

左右は完全に絶壁となって、はるか雲の下まで続いている。

 

なんだよこれ…

標高6000mで平均台を渡れというのか…

少しでも風が吹けば、人間なんて簡単に吹き飛ぶぞ。

 

しかし、もうゴールは見えているんだ。

いや、恐怖を感じる余裕すら、今の自分には無いのかもしれない。

どうせ、たかが10mだと思って、ささっと渡ってしまった。

 

あとに続くはゴードン。

しかし、彼はまだ正常な判断能力を保っていたのだろう。

さすがに危険すぎると主張し始めた。

 

ゴードン:「普通に考えてここをそのまま歩いて渡るのは危険すぎる。横に溝とかを作って行った方がいい!」

イクマン:「ダイジョウブー!ダイジョウブー!」

 

ドン引きするゴードンも、仕方がなく渡ってきた。

 

あとで聞いたら、「あれは危険すぎる…」と言っていた。

山岳救助隊のプロが言うんだから、そうなんだろう。

さすがボリビアのツアーだ。アトラクション満載だ

 

 

 

 

そして、俺らは登頂した。

 

 

 

 

 

時刻は朝の6:30、ちょうど日の出の瞬間だった。

所要時間は5時間、我ながら悪くない登頂だったと思う。

 

登頂の瞬間、ガイドのイクマンが抱き着いてきた。

正直、人生で初めて、達成感で泣きそうなったがさすがにそこは我慢した。

 

ゴードンにも本当に助けてもらった。本当にいい奴だった

 

頂上からはラパスの町が一望できた。

そろそろ隆も起きる頃かもしれない。

 

 

俺らが登ってきた所も見下ろせた。

よくここを登ってきたものだと、自分でも信じられない気持ちだ。

 

 

ガイドのイクマン。

最高のガイドだった。ありがとう。

 

 

 

自分より高いものが何もない世界。

雲ですら遥か下の方に見える。

そこに自分いることが信じられない世界だ。

 

 

 

頂上にはすでに10人程が登頂していた。

誰もが静かに喜びをかみしめている。

 

本当に全員とハイタッチして回りたいくらいだ。

(そんな体力1ミリも残ってないけど…)

 

 

お疲れさん、自分!グッジョブ!

 

そんな喜びの瞬間にも終わりがきた。

狭い頂上では、後続がくるのですぐに退かないと行けないのだ。

と同時に地獄の帰り道が始まった…

 

登山は上ってから、その後降りるときが一番危ないと聞いたことがある。

気が緩んでしまうからだそうだ。

 

あれっ?それは俺のことか?

もう、これでもかっていうくらい気がユルユルだよぉ~

 

というか、もはや体力が残ってないし、

5時間かけてきた道をこれから戻るのか!

しかもあんな急な斜面を!と信じたくないのだよ。

 

そして、事件は起きた…

 

 

 

頂上からの帰り道

稜線(尾根)を渡ってる時に

滑落しかけた!(笑)….しかも、2回も!

 

 

あっ~~~~~~~~!!!!

 

 

と足を滑らせて、真っ逆さまに落下…

とはならずに、奇跡的にイクマンとゴードンと繋がったザイル(命綱)で助かったものの

これはマジで冷や汗かいた(いや、笑いごとじゃない!)

 

さぁ急斜面も乗り切ったぞ

それであとはゆっくり帰れるぜ。

 

しかし….

 

え、何故ダッシュで戻るのー!?

 

帰りは先頭になったゴードンがすさまじい勢いで進んでいく。

ロープで繋がれた俺は、引っ張られるように必死についていく。

 

 

 

足がもつれて転びそうだ。

何で登頂してからこんなにつらい思いしなきゃいけないんだよ..

(いや、マジでゆっくり行こうよ~泣)

 

ほら、みんな休憩してるじゃん。俺らも…

 

これから頂上を目指すグループとすれ違っていく。

 

行きは暗くて見えなかったけど

いたるところにクレバス(穴)があいてる。

 

 

イクマンは最後まで元気だね。

 

もう、俺は死ぬ寸前だよ…

 

そして、2時間くらいで何とかハイキャンプに戻り付いた。

 

俺ら:「いや~何とか生き抜いたーー!!」

ゴードン:「俺は、キイチはイケると初めから思ってたぜ。」

 

よく言うわ(笑)

てか、見ろよ、こんなにダッシュで帰ってきて

まだ数人しか戻ってないじゃないか!

 

 

そして、全ての力を使い果たしてパタリと座り込む。

そこにイクマンがスープを差し出してくれた。うますぎるよ~(涙目)

 

ちなみに、最終的に今日の登頂アタックでは、6、7割の人が登頂したらしい。

天候が最高で、気温も高かったらしい。

てか、これで吹雪でも吹いてたら絶対リタイヤしてたわ。

 

そして、しばらく外で目を瞑って寝ていた。

俺らのツアーの残り4人が戻ってきた時点で、ベースキャンプまで下りてく予定なのだ。

(ちなみに、残り4人とも、頂上からの降りるときに見たから、全員無事登頂してるはず)

 

すると、急にトントンと肩を叩かれた。

ゴードンだ。

 

そして、なんと今から4人を待たずに

先にイクマンと一緒に下のベースキャンプに下りようと言い出した。

 

え…俺、マジで疲れてるんだけど….

とは言えず、そのままついて降りることに。

 

 

ん……..??

 

で、何で小走りで戻るーー??

何の意味があって急ぐんだ!

 

普通に元気な時でも

こんな標高で小走りはヤバいって!!

 

朦朧としながら、ついていき

1時間半ほどでベースキャンプ(標高4700m)に辿りついた。

 

 

そこで1時間ほど待っていると

残りの四人が下りてきた。

やはり、無事全員登頂を果たしたようだ。

 

昨日体調不良をおこしていたジミーも

どうにか、イルマが頂上まで引っ張り上げたらしい(笑)

 

 

そして、一行はバスに乗って、1時過ぎにはラパスに戻った。

そこで互いの旅の幸運を祈って、俺らは別れた。

 

たった二日しか一緒にいなかった仲間なのに

共にくぐり抜けてきた困難を思えば、ただならぬ絆で絆で結ばれてる気がする。

 

だから、「またどっかで会おうな!」と言い合って分かれた。

 

人生初となる雪山登山という長い一日も、これで幕を閉じた。

 

では、登頂までの様子を動画でどうぞ。
(ハイキャンプから頂上までは、さすがに取れませんでした)

【旅を追う】No.35「標高6088m!ボリビアのワイナポトシ登山に挑戦!」

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