2012年6月27日 林 季一郎

今日も船は出ない

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2日連続で睡眠不足でもはや気持ちが悪い。 7:30に起きると、期待もせずに事務所へ向かう。どうせ船はまだだろう。無人の港は今日も静まり返っているのだから。

事務所に入ると既に4、5人が乗船手続きのためか、窓口から窓口へと面倒くさそうに行き来している。一人の職員に聞いてみた。船はまだか?英語は一切通じないから、時計を指差しながらジェスチャーでだ。伝わったのかは知らないが、とにかくまだだという。いつだと聞けば今夜だという。

もう、やけだ。自分でも驚く程、もう苛立ちを隠せなくなってきている。良くないとは思いながらも、職員にも横柄な態度をとってしまう。いちいち時間のかかるこの国の手続きを目の前に、これまではやれやれと笑って過ごせてきたことが、今は無性にイライラさせる。理性では抑えなければと分かっていても、感情がそれを邪魔する。もっともらしい理由を挙げようと思えばできる。船が一向に出ない、車を港から出せないからカップ麺ばかりの食事で体調もいまいち、とにかく暑い、シャワーに入れない、イランビザの代理店が音信不通といったところだろうか。でもそんな事は所詮嘘っぱちの理由だ。

自分が苛立ってる時の理由なんてのは、たいてい「自分自身がやるべきことをやっていない、やれるのにやろうとしてない。そして、それに自分でもうすうす気付いている」から。それを俺のまわりの人や環境のせいにして、すり替えてるだけ。少なくとも俺の場合はそう。だから一歩踏みだしてやれることからやればいいんだけど、それが中々難しい。とにかく今は何もやる気が起きないんだよ。

とりあえず深呼吸して、笑顔笑顔と自分に言い聞かせる。一瞬ポジティブになるも、すぐに、はぁ~…となる。そうこうしてると、隆が起きてきたので、街へ行くことに。デリカは港から出せないから、とぼとぼ道を歩きながら手をぐっと横にのばす。そう、ヒッチハイクだ。ただ、ここの場合、お金を払うから実質は白タクなんだけど。一台がすぐにつかまり、街に入った。飯を終え、カフェでネットを使おうとするが、余りの遅さに場所を変えてみるもそこも同様。Twitterすら読み込まないのには、さすがにうんざりしてきた。気分転換に映画でも観ようとおもっていたのに。というか昨日はかなりネット早かったのに…

仕方なく16:00くらいには港に戻る。船はまだだ。待合室、気づけば俺一人だ。無人になった薄暗い部屋にぽつーんとしている。別に船がくることを期待しているわけじゃない。さっきフランス人バイカーが職員に聞いたら、明日の朝だと言っていたから。だからといって、車に戻ったらもう寝るしかないのだから。

23:45たまらず車にもどると、Twitterでユーロサッカーの準決勝をやってることを知る。こんな無人の港で俺らは何をしてるんだろうか。急に笑えてきた。外ではクレーン車の機会音だけが不気味に轟いている。

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