2012年6月22日 林 季一郎

シルクロード激走の始まり

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幹線道路脇で寝たもんだから、通り過ぎていく車の風切り音で目が覚めた。朝はまだ7:30、それでも俺らは急がなきゃいかん。寝てる隆をそのままに、車を走らせる。サマルカンドの町までもう近いはずだ。

タシケントからの道路はきれいに舗装されていて、まだ早いからか、車の数も少ない。調子良く進み、1時間あまりで町に入った。さて、どうしようか。時間的に観光はできないし、何よりiPadの電池が残り2%しかない。車内のサブバッテリーが故障してる今、何とかカフェで充電しなくては。車を止め一人近くのカフェに入った。簡単な朝食を食べながら30分程で充電が15%になった、残念だがもうこれ以上は時間はない、車に戻った。

すると、隆はおらず車も鍵がかかっていて入れない。おそらくぶらぶらしてるに違いない。ついでだからとすぐ隣にあった巨大なモスクへ向かうと隆がいた。写真を何枚か撮った後、町をでた。朝から何も食ってない隆は、隣で日本の荷物に入っていた水ようかんをすごい勢いで口に放り込んでる。

再び幹線通りに入り、さらに西のブハラの町を目指す。遠ざかっていくサマルカンドの街並み、本来なら2日はゆっくりしていくつもりだったのがこの有様だ。iPadの電池不足からスライドショーもとれない。くそ、シルクロードのまさに中心地を撮れずに、世界一周スライドショーもへったくれもない。しょうがないんだと言い聞かせても、感情がそれを許さない。とてつもない罪悪感と自己嫌悪がごちゃ混ぜになってのしかかる。そして何なんだこの燃えるような暑さは。車内に吹き込む風は気休めにもならない。次第に考える事も面倒になり、いつしか無気力で惰性的にハンドルを握るだけになっていく。

ブハラには昼過ぎに着いた。小さな町だが、街全体がイスラム建築で囲まれていて、まさに中世のイスラム社会に迷い込んだようだ。ここにきて隆が気持ち悪いと言うので、池のそばの涼しそうな屋外レストランで休む事にした。体調の悪そうにテーブルに突っ伏す隆を前に、肉片とパンを腹に流し込む。隆は何も口にしない。

レストランを出て、少しだけ観光したのち町をでる。

しかし、ちょうど狭い路地を抜けて幹線通りに入ろうとしていた時、「おうぇ…」我慢できなくなった隆が隣で吐き出した。慌てて車を止めしばし休憩したのち、再び出発だ。本来なら休みたいところだろうが、とにかく時間がないのだ。町を出るとまわりの景色が一変した。ついにキジルクム砂漠に入ったのだろう。ところどころ道が砂に隠れ分からなくなっている。隣では時折隆が、窓から外にゲロをぶちまけている。壮絶になってきたなこれは。

進むにつれて少しずつ悪化していく路面、アスファルトはとうに崩れ、剥げ落ちている。むき出しになったデコボコの岩面が車体を揺らす。次第に揺れは激しさを増し、ついには頭上の取手を掴んでいないと体を支えられなくなる。スピードも出せず、今では時速10キロも出てない。それがかれこれ2時間以上も続いてるんだ。心底嫌気がさしてきた。いっその事、猛スピードで駆け抜けようかとも思うが、車体への影響を考えればそんな暴挙は絶対に駄目だ。西のカザフスタン国境まではまだ500キロはあるんだよ、こんなんで本当に間に合うのだろうか。出国リミットまではあと50時間あまり。夕陽と同時にこちらの気持ちも沈んでいく。

夜8時、日もすっかり沈み少し涼しくなった頃、路肩では、人々が砂地にマットを敷いて祈りを捧げている。こんな無人の大地でも、彼らはきちんとメッカの方角を見定めているのかと感心してしまう。

夜9時、次の町に近づいてくるとようやく舗装道になった。町中に入っても真っ暗な道をひたすら進むだけだ。ときおりあるガソリンスタンドの明かりだけが、かろうじてそこが町だと分からせてくれる。23:30町のはずれの空きスペースにて車泊する。出国リミットまで残り二日。明日も朝は早い。

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