さぁ、勝負の日だ。
コンゴ共和国の首都ブラザビルから、コンゴ民主共和国の首都キンシャサへ。
世界で最も近い距離にあるという首都の間を流れるコンゴ川をフェリーで渡るんだ。
かつてその名をザイールと呼ばれていたこの川。
世界でも有数の豊かな天然資源を持つ国であったがために、近年まで内戦と戦争が続いていたという。
「第一次アフリカ大戦」
なんだそれは。SFか何かだろうか。
初めてこの言葉を本で見かけた時は、小説の中の架空の戦いかと思った。だから、そんなことが、しかも比較的近年！実際に行われていたと知ったときは驚いた。
映画『ホテルルワンダ』や『ルワンダの涙』で知られる、1994年ルワンダで起きたあまりに衝撃的な民族虐殺。映画を見てその事実だけは知っていた。でもその続きがあったとは…
その後、ルワンダを追われる形となったフツ族たち。しかし、ことはそれだけでは終わらなかった。権力闘争や地下に眠る天然資源をめぐり様々な思惑が交錯し、周辺国、さらには先進国までもを巻き込んだ泥沼の戦いへと発展していたのだ。そのことを、自分は全く知らなかった。
今、目の前をゆっくりと流れるコンゴ川は、まさにその殺戮の歴史の生き証人なのだ。向こう岸に見えるキンシャサの街並みへも、かつては大砲を打ち込んでいたと聞くと、見方は大分変わってくる。
そんな場所も今では平和そのもの。雑多な人やものでごったがえしているが、それはアフリカの主要都市ならどこも同じだ。しかし、旅人にとっての戦いは今も続いているのだ…
コンゴ川の渡航、それはアフリカ西回り縦断者にとっての最大の難関。縦断の旅でも、最もカオスで苛立つ箇所としてあまりに有名だ。悪徳警官、不明瞭な料金、そして賄賂、そしてそしてまさかの渡った後の入国拒否！要するにこれまでとは次元が違うというのだ。
ネットでも散々に書かれているこの渡航だけに、実は、ここを迂回してキンシャサへ入るルートを通る人も多い。でも、そこはそこで、どうしようもない悪路であるというので、今回は迷った末にフェリーで突っ切ることにした。2日間遅れること、悪路による車へのダメージ、そんな理由だ。龍玄君の「あえてそこを正面突破したくないんですか？」という挑発に乗ってしまったということも、もしかしたらあるかもしれない（龍玄君め！）。
話があまりに長くなりそうなので、そろそろ事の成り行きを話します。
朝の9時には、港に入っていた。昨日のうちに、必要な手続きとかはだいたい聞いて調べておいた。そして、午後5時まで実に8時間は闘った。なのに、なのに…..結局渡れなかった！！ボケ！！くそー！何なんだ、ここは！！！！！！！
少し話が飛びすぎたか。今後通る人のために少し詳しく書くと
まず、通関で「俺がボスだ！」という男に車両の出国書類を作ってもらう。
よし次。警察でも同じような書類をもらう。事務所の中で待ってると、そとで怒声が聞こえたと思ったら、窃盗を働いたという2人が警察に取り押さえられていた。少しでも犯人が抵抗すると、警察は容赦なく殴る蹴る。一昨日も同じようなこと見たから、これがコンゴスタンダード。そして、今、俺の隣でその二人が手錠を掛けられて座っている。めっちゃ強そうだし、なぜそんなに俺を睨む…怖すぎる
まぁこれも案外すんなり終了、次はパスポートに出国スタンプをもらいに行く。「金くれ」「うるさい」「しょうがねぇな、はいスタンプ」。さぁ次つぎ！
船会社でフェリー代を支払う。そして、乗り場へ。と向かうが、そんなものは存在しない。乗り付けてある船の近くまで行って、適当に交渉するらしい。
そして、ここで衝撃的な事実が発覚。さっき払った2万円くらいのフェリー代、なんとフェリーに車を積み込むためのクレーン代だけだというのだ！
フェリー代はさらに2万だよ。なんだそれは！
あっ、でも今日はもう船終わっちゃたから、今日渡りたいなら特別料金だね。何じゃそれは、アホかーーー！！！
（この時点で、混乱に乗じてリカさんがiPodを盗まれる…）
粘るもダメ。どうやってもダメ。地面にしゃがみこんで、頭を抱えるそぶりをしてもだめ。
キンシャサは、もう目と鼻の先だ。あ〜すぐそこなのに…
どうしよう。どうする。よし、諦めて迂回しよう。
そうして、今まで苦労して作ってもらった書類を払い戻してもらうべく、一つ一つまた事務所をめぐる。疲れもイライラもピークに達する。ここで初めて、隆とも口論になる。唖然とする警官もおかまいなしに。
そして、午後5時、闘いは終わった。負けた。
その夜、心に決めたことがある。あまりにも色々あり、少し思うところがあったので。
「禁酒、誰にもキレない、もっと旅を楽しむ」
さぁ、気を取り直して、明日から頑張ろう。
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