2013年11月27日 平岩隆

相方が漂流してる時に、僕は中米一の危険地帯にいた(後編)

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※こちらの記事の前編はこちら

⇒ 「相方が漂流してる時に、僕は中米一の危険地帯にいた(前編)」 

 

くよくよしていてもしょうがない。覚悟を決めてタクシーで中心にある保険屋を目指した。

そして中心に入った。

 

誇張ではない。殺気がした。

 

さぁ、どうなるんでしょうか、僕らのデリカ(車)は受け取れる??

 

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(恐る恐るタクシーの中から一枚だけ撮影。すぐにカメラを隠す。)

 

全ての建物が廃れていて、全体的にどんよりとした灰色のオーラに溢れていた。

街中がスラムといった感じで浮浪者が闊歩している。

 

アフリカでも南米でも感じなかった恐怖を、身体全体で感じた。

怖かった。

 

タクシーが保険屋の目の前で降ろしてくれたので、一目散に保険屋に駆け込んだ。

かなり待たされたが保険自体は無事申請できた。

第一ミッション完了。

 

続いて通関に向かう!

通関はまた郊外の港の方面なので、中心からは避難できる。

「うまくいけば今日中に車を入手できるぞ!」

期待が膨らんだ。

 

通関につき、必死に事情を説明する。

インターンの大学生はしっかりやってくれたのだが、ここの職員がなかなか怠けていた。

とにかく待たされる。

刻々と時間が過ぎて行く。

職員はごはんを食べている。

私の目の前で。

のうのうと。

 

かなりイライラさせられたが、通関の書類も無事ゲット。

第二ミッションクリア!

後は港に戻って提出するだけ!急げ!

 

船会社の女性に指示された場所に行き、事情を説明するとポカーンという顔をされた。

スペイン語で「車を持ってる。受け取りたい。書類はある。」と必死に伝えるも、余計ポカーンとしている。

無理もない。個人の旅行者が車をコロンに輸送することなどよくある話ではないはずだ。

 

そこでセキュリティらしき強面の男が登場。

「お前英語はしゃべれるか?俺についてこい。」

どういうわけかその強面の男が先導してくれた。

 

謎の窓口を転々とし、保険と通関の書類に次々とはんこが押される。

「いいぞ!いいぞ!」

16時のタイムリミットが刻一刻と迫っている。

 

できることなら今日中に受け取って全てを終わらせたい。

強面の男が自分の代わりに精一杯事情を説明してくれている。

「やさしい。やさしすぎる。待てよ… これは最後に金を要求してくるパターンか??」

しかし、どっちみちこの男がいなければ何もできなかったのだ。多少要求されても仕方ない。

 

そして最後のはんこが押された。

いざ、デリカ受け取りか!?

 

そんな想いとは裏腹に、

「では車の受け取りは明日の朝八時になります。遅れないように来てください。」

という冷たい一言が言い放たれた。

強面の男も精一杯説明してくれているが、こればっかりはどうにもならないらしい…

通関の職員を恨んだ。

 

まあ仕方ない。むしろ明日受け取れるのならいいじゃないか。むしろコロンで生き残る方がよっぽど大事だ。

そう言い聞かせて無理矢理納得した。

 

強面の男は、

「残念だったな。明日は絶対に8時にくるんだぞ。じゃあおれは仕事に戻る。」

とだけ言い残し、去って行った。

彼は親切で私を手伝ってくれていた。男の中の男だったのだ。

 

さて、困った。

明日の朝八時にコロンとなると、パナマシティーまで戻るわけにはいかない。結局コロンでホテルを探さなくてはならないのだ…

だんだんと日が暮れて行く。夜のコロンはもはや想像がつかない。

やばいぞ…

 

港のガーディアンらしき人にダメ元で、この辺で安く泊まれるホテルはないかと尋ねてみた。

すると市内のホテル・インターナショナルなら2500円で泊まれると教えてくれた。

2500円かー…

この旅でそんな高価なホテルに泊まったことはない。

 

「もっと安いホテルはない?」

そう聞いてみるものの

「それ以下のホテルはマフィアが出るからダメだ」

ということらいしい。

その言葉に妙に納得し、再びコロン市内にあるホテル・インターナショナルへと向かうことになった。

安全はお金で買えるのだ。

結局ホテル・インターナショナルで格安の部屋を探してもらうと、運良く2000円の部屋が空いていた。

狭い部屋にベットが置いてあるだけだが、クーラーと温水シャワーも付いている。私には十分すぎるクオリティーだった。

部屋に入った途端ベットに倒れ込み、気づいたらそのまま眠りに落ちていた。

しかし今日はまだバナナしか食べていない。空腹で一時間で目が覚めた。

夜のコロンを、目の前の中華料理屋まで駆け込み、よくわからないスパゲティーを食べた。

語弊があるかもしれないが、中華料理屋に日本人がいたところで中国人だと思われるだけだ。襲われる心配もないだろう…

 

すぐさま部屋に戻り、部屋の中に身を潜めた。

時刻は20時。

残念ながらネットは繋がらなかったので何もすることがなかった。

シャワーで長過ぎた一日の疲れを洗い流し、謎に筋トレをしたりして暇を持て余した。

 

いずれにせよ、こんなに神経をすり減らした日はなかなかない。

ベットに横たわり、深呼吸する。

目を閉じて、明日のスケジュールをイメージする。

昨夜聞いた「Proud Mary」のリズムが頭をループする。

 

生き延びた。

 

 

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