5:47起床。暗がりの中、すでに隆とリカさんは出発の準備に取り掛かってる様子だ。昨夜の蚊と暑さの襲来で全身に倦怠感が残っているが、そうも言ってられない。1か月もいた、この街アブージャともようやくお去らばできるのだから。さぁ、だぁーっと準備にとりかかろう。
道中のシャンプー用の水をペットボトル12本分くみ、テント等を詰め込む。売れ残ったバッテリーがじゃまだ。いっそのこと捨ててしまおうかと思うが、迷ったすえ持っていくことにした。
“世界のどっかに、こいつを必要としてる人がどっかにいるはずだ!うん!”
クリスとのお別れの儀式もこれで三度目だ。でも今回はもう戻ってくることはない。そうなると自然と別れもさびしくなる…と思いきや、眠気と謎の胃もたれのあまり、案外さら~っと挨拶をして分かれる。向こうも向こうで眠かったようだ。
それでも最後に、彼から彼の大事な建築設計図を渡されたときは、彼との充実した日々への感謝の気持ちがこみ上げてきた。「建築士になるのが夢か…考えてみれば自分にはこれといった夢なんてないよなぁ~」なんて思う。何でも整ってる日本にいると、逆に夢なんてなくても生きていけるのかもしれない。
とにかく、ろくでもないアブージャでの滞在も彼のおかげで随分楽しい思い出になったんだから本当に有難う、クリス。
さぁ、そろそろ出発だ。国境までは600km、今日中に出国しなければビザが切れる。本当に全てぎりぎりだよ。
見飽きた街の景色も一度郊外へと出るとがらっと変わる。目の前に続く道路を包み込むように、道路わきからは木々が伸び出している。
さらに南下するにつれて、徐徐に砂っぽい土色の景色が、みずみずしい緑へと変わっていく。それと同時に、じわじわと暑さが増していき、冷房を付けていても肌がベトベトと汗ばむ。あぁ、嫌だ。熱帯地域は生きづらいから嫌いだ。
それでも嬉しいことに道路はずっと舗装されているようだ。嬉しい誤算だ。これなら今日中に国境に着けるかもしれない。
そして、午後4時頃、まだ明るいうちにカメルーンとの国境地帯に入った。
いくつかのチェックポイントを順調に通過していく。しかし、あと数百メートルで国境ゲートというところで、つかまってしまった。やはりビザ切れが問題らしい。
「頼むよ通して下さいよ。もう出国するだけじゃないですか!」「いーやダメだ」
その後もやりとりは続く。
「でもビザは30日もらってるんですよ。国境でもらった滞在許可が14日だけなんておかしいじゃないですか」「いーやダメだ。そもそもビザの30日ももう切れている」「いやいや、今日が30日目ですって」
そして何故か、2月1日 、2日、3日……28日、3月1日、2日….7日まで全ての日付 をいちいち書きだしてから、数え始めた。(ちょっ..おいおいおい!)
そうして時がすぎていき、30分後ついに解放された。
「国境では問題はないよ。なんたって俺が一番頭がいいからね。あそこの連中は何も分かりゃしないさ!」というボスの言葉を信じて、ゲートに向かう。そして、
担当官「何だこれは。ビザが切れてるじゃないか!」(おい、ボス…)
結局、出国手続きが終わったのは7時前。スライドショーを撮るためにも、国境を通過するのは明日にして、今夜はゲート前でテント泊する。