予定より2時間遅れて10時に起きた。
さて今はどこなんだろうか。昨日は暗くてよく分からなかったが、ちょうど森が開けて、河川敷の広場のようなところの真ん中に止めて寝てたらしい。道もこのあたりは砂利道だ。
昨夜は暗くて分からなかったこの先の道もすぐ見つかった。隆達が落ちかけたという崖のとなりに、小川へと下る道があって、そこを渡っていくらしい。ちょうどバイクで通りがかった現地の人にあってるか聞くと、「Oui!Oui!」と言う。合っているということらしい。
その小川の流れる先にある小さな滝があった。そこで砂まみれの体を洗う、まさに天然のシャワーだ。
そのまま夜のシャワー用の水を汲んで、出発した。
今日は俺が運転するわけだが、助手席に座っているのと違って、実際にこの悪路を運転するのは初めは怖いものだ。
車輪の間隔より広い地割れがずっと続いたかと思うと、ガックン!と急に段差から落ちる。
道路まで伸びている樹木の根、頭の大きさくらいの石、そんなものを延々と乗り越えていくんだ。時速5kmくらいで延々とね。
少しでも油断すると、車の底をガツン!!ギーギーー!ってな具合で強打する。
デリカが壊れたら俺らも終わり。つまりデリカは一心同体なわけだから、底を打つ度に胸の奥がギュッと痛む。本当だ。思わず「あ!」っと声に出てしまう。
あれ?でも、今日はやけによく底を打つなぁ。いつもなら全く平気な突起物でも底に触れる感触がある。
まだ走り始めて10分も経ってないが、とりあえず車を止めた。
隆に車を降りて底をチェックしてもらうと、「あ~、これはダメだな…」
マジかよ。急いで降りて確認してみると、車の底にある大事な部分を保護するための鉄板が剥がれてしまっている。
ん~どうしたものか。この先どんな悪路が続いてるのか不明な今、さすがに鉄板まるごと取っ払うのはまずいしな…。
しょうがないから、ロープと耐久ひもで応急処置をしよう。慣れない作業は大変だが、アフリカを走ってるんだなぁ~と思うとこれはこれで楽しい。俺らは冒険をしているんだ。
最後にぎゅっとロープを絞って、砂埃まみれのTシャツを着替え、さぁ出発だ。もう昼前だ、急がなければ。
しかし、走り始めて10分も経たないうちに、今度はりかさんのハイエースの底の鉄板が剥がれてしまった…。
時間がないのに..という焦りと不安で気持ちが滅入りそうだ。
後ろのハイエースのヘッドライトからのパッシングで「問題発生!」の合図を受けて引き返してみると、確かに鉄板の一部がめくれていた。ただ、前方からめくれたデリカの場合と違って、後ろからめくれたたので、とりあえず、わざと石に乗り上げることで強引に剥がれを押し戻すことにして出発することにした。
いや、それにしてもとんでもないところに来てしまった…。
悪路とすら呼べない道。いや、登山道、それもかなり足場の悪い箇所を、強引に車で這い上っている感じだ。
今更ながら、車でこんなところが通れるか!?と信じがたい気がするほどだ。唸り声を上げながらデリカは必死に登っていく。こんなの人間が歩くのだって大変だろう。
今後は絶対メインルートしか通らないぞ..と心に誓いながらも、今はとにかく先を急ぐしかない。
もう出発してから2時間、まだ10kmも進んでない…
さらに1時間ほど走る。
少し森が開けたところに大きめの集落があり、そこを通過すると、ポリスチェックで止められた。
どうも、りかさんの車のギニア入国書類がないとダメらしい。もめにもめた結果、そこの担当官を一人車に乗せて一緒に次の街まで行くことになった。え、でもこの悪路じゃあ、次の街は明日だぞ。寝るときどうすんだよ。
それでも、向こうが乗るといってきかないので、仕方なくおじさんにはデリカの助手席に乗ってもらった。
何とか英語は通じるものの、さっきまでかなり揉めた相手なだけにかなり気まずい。
そして、集落を出て、悪路に戻ってすぐ。
後ろのハイエースから、再びパッシングでの救難信号、何か事件発生らしい。
戻ってみると、先ほどの底パネルが、今度は完全に剥がれてしまっている。
はぁ、マジかよ…。みんなにも、おじさんにも一度車から降りてもらい。
ちんたら作業すること1時間、デリカと同じくロープで応急処置をして、ようやく出発した。
もう4時前だぞ、こんなんじゃ、今日は全く進めないな。
そんな俺らをあざ笑うかのように、再出発して数分後、小さな川渡りの際に川底に触れたのか、ハイエースの応急ロープがズダズダになった。もうパネルも潰れてぐちゃぐちゃ。くそ、なんだったんだ、さっきの苦労は。
もう直しようもないので、そのままパネルを取っ払い、出発。
くそ、もうやけだ。今日中にその街まで行ってやる。まってろよ
夜中になり、日も暮れてから随分経ったころ、小さなチェックポイントで、今度は軍と揉める。
乗ってるおじさんが必死に事情を説明して通してもらおうとしてるが、今度はそのおじさんが偽物だと疑われる始末。
どういうことだよ、ちゃんと警察の身分証明書もあるのに、この国はどうなってるんだ!!!
結局、軍のバイクに先導されて街中に入った。
もう遅いので手続きは明日と言うことで、就寝。おじさんは近所の親類の家に意気揚々と去って行った。
すでに深夜2時過ぎ、今日も長い一日だった。おやすみ