2012年6月6日 林 季一郎

『坂の上の雲』の世界

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周りがバタバタとしだす音で目が覚めた。隆に時間を確認するとまだ6:30。昨日学生たちが、明日も8:30から授業だと言ってたが、こんな時間に起きるのなんて久しぶりだから眠い。頭もすっきりしない。それにしても旅に出てからというもの、決まった時間に起きる必要がないから、目が覚めた時が起床時間。何と贅沢なと言われそうだけど、不思議と毎日だいたい8時前には起きてる。学生時代よりよっぽど健康的だ。

それはさておき、ぼーとしてると学生たちが朝食の準備をすべく、部屋を出たり入ったりしている。手伝おうとしても、ここでは俺らはお客様、一切手出し無用と言われ、手持無沙汰にしている。昨日の残りのプロフを平らげ、みんなと一緒に急いで大学へ向かう。時計を見ればすでに8:00。いや、これ絶対遅刻だろ..

さすがに学生たちも焦ってるのか、今日はバスではなく、地下鉄を使うことに。どんな感じかと言えば、カザフスタンのものとまったくほぼ同じ。車内はぎりぎり座れるくらいの混雑ぶり、エース曰くこれでも通勤ラッシュだそうだが、日本のものと比べてもらっちゃ困る、次元が2,3個違うよ。

10分程遅れて教室に入ると、この間の女の子3人を相手に既に授業が始まっていた。経済の授業って聞いてたからてっきり大教室での講義かと思ってたから、身を小さくしてそそくさと入った。部外者な上に遅刻とは…

「あ、すいません。スガタニ先生、今日は宜しくお願いします!」

先生「おう。ツカタニね。」

ツカタニ先生は、50代くらいだろうか、気さくな感じのおじさんだ。聞いてると授業内容は、金融についてらしく、割引現在価値や先物取引といったことを説明している。日本の授業とは違って、聞き手の生徒と質問でやりとりをしたり、話し合いながら進んでいく。途中、折角おれらが来ているということで、内容を変更して「何故、外資のウズベクへの投資が増えないのか?」という話しになった。ふむ、何故なんだろう?生徒たちも真剣な様子で考えている。

女の子「それはウズベクの事を皆が知らないからです。」

先生「ん~それもそうだね。他には?」

女の子「分かりません。どうすればいいんですか?」

ああ、こんな短いやり取りにも、俺らとの立場の違いがあるんだなぁと思った。

「どうすればいいんですか?」って、「私たちはどうすればいいんですか?」ってことかな。自分たちがウズベクをどうかしなければいけないって真剣に考えてるんだな。やりとりは続く。外資が投資に二の足を踏んでるのは、こう毎年のようにインフレが続くと、外貨建ての投資資金がどんどん目減りしていってしまうからと先生が話すと、「じゃあどうすればインフレを抑えられるんですか?教えてください。」

質問する側は真剣そのものだ。ここじゃあ、ただ知識を暗記するというより、今この国の抱えている問題をどうすればいいんだという話なのかもしれない。そりゃ生徒も必死さが違うわけだ。

一方で先生が言うには、この国では預金や国債といった問題を教えようにも、そもそもそういったものを生徒自身が使っていないから理解するのが難しい。授業内容のレベルからだけなら、もしかしたら日本の方が高いかもしれないが、日本の学生の場合、みんな個人の銀行口座を持ってるし、個人向け国債といった金融というものが身近にある。そういう意味で、それらを実際に知らないで机上だけで議論しなければならないここの生徒に比べて、俺らは幸せだと言う。そいうものなのだろうか。何とも実感できないものだ。

授業が終わり、先生と一緒に学校を出る。先生は何でこんな所で教えているのだろうか。

『そりゃあれだよ。生徒が必死だから教えてる方も面白いんだよ。なんたって、「坂の上の雲」の世界だからね』。

-まことに小さな国が、開化期をむかえようとしている。

ドラマ冒頭で出てくる、大好きな一節だ。自分もそんな時代に生まれていたらと思うと、何ともうらやましい。自分たちの目指すべき道を知っている。この感じ、カザフスタンのアスタナで感じたものと似てる。

封建の世から目覚めたばかりの日本が、そこを登り詰めてさえ行けば、やがては手が届くと思い焦がれた欧米的な近代国家が”坂の上にたなびく一筋の雲”ならば、彼らの見上げている雲とは何なのだろうか。

話を戻そう。

授業後、まだ先生の話を聞きたいと思ってたらバザールまで連れていってくれることに

。聞いたところ、以前は金融関係の仕事をされていて、3.11の大震災でウズベクから日本が受けた支援の恩返しにJICAのシニアボランティアとして教えにきているのだそうだ。そんな人もいるんだな。そういえば日本センターにも、日本の子供たちからウズベクへの感謝の寄せ書きがあったけど、ウズベクからの支援があったなんて知らなかった。

バザールとロシアの教会などを一通り周り、そこで先生と別れ、タクシーでホテルに戻った。恭一さんとも一旦そこで別れ、再び日本センターへ。隆はポストカード作成のためにホテルロビーに残った。

一階で受付をしようとすると、「長ズボンじゃないと入れません」と。いや、これまでは入れたからお願いしますよ。で、結局入れることに。なんなんだ。

そのまま、中央アジア関連の本を手当たり次第に読んで、最後に映画「沈まぬ太陽」をみる。そして18:00の閉館とともに追い出され、隆の待つホテルへ。そのまま飯を食いに、ナショナルフーズへ。もう7回目くらいかな。もう現金がないから、焼き鳥一人2本とパンで腹を満たして、さあホテルの駐車場に帰ろう。車に戻り、ゆっくりバックしたその時。ごつん。鈍い音がした。

やば、何かにぶつかったらしい。ドアを開け、後ろを振り返ると車が横向きに止まっている。つまりだ、後ろに止めてあった車の側面にぶつけたわけだ。うわー、まじかよ。ミラーで確認したのに…

先に助手席の隆に降りてもらい、俺は車を前に出してから降りた。見てみると、運転席側のドアが少しへこんでる。俺の心もぺしゃんこだ。

幾らするんだろ、と心配してると、近くにいた英語話せる兄ちゃんが交渉してくれた。なんと20ドル(1600円)でいいらしい。えっ、確かにすごいゆっくり当たったからへこみは少ないけど、さすがに安すぎないか??それでもいいらしい。

とりあえず、100ドルを闇レートで両替してもらい支払い、事なきを得た。ホテルへ向かう車内は無言だ。大事にはならなかたものの、気持ちは沈みきってる。出発前の事故の時もそうだったけど、自分にすごい腹が立つんだよね。何で調子に乗ってるんだよ!って。もう嫌になったので、寝ます。

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