2013年3月15日 林 季一郎

目の前でボートを逃す

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昨日に引き続き、朝からリカさんの機嫌が悪い。理由を聞いても言ってくれないし、何を話してもほとんど無視だ。

らちがあかないので、先に次の街に行くことにした。

聞いていた悪路とはずいぶんちがうのに驚く。確かにダートではあるけど、平に整えられていて、びゅんびゅん飛ばせる。ここでもガイドブック、ネットともに情報は古かった。道がないって!?とんでもない!もう道は完成してるんだ。

「あーー!!」突然隆が声をあげた。

「なになに?」

「ゴリラ、ゴリラ!ほらあそこ!」

え、まじか!確かに遠くのほうに黒い影があるが、すぐに森の中に消えてしまった。よくわからなかったが、隆は本当にゴリラだったという。くそー、見逃してしまった。

時速80kmくらいでとばすもんだから、8時間はかかると言われていたところを結局2時間半で、目的地のSocamboの町に到着。ここが、コンゴとの国境になっている川の渡航地点なのだ。

りかさんが来るまでしばらくぼーっとする。
見渡す限り、土と埃、それにボロ小屋といった風の建物が点々としているだけの、小さな町、いやエリアだ。それでも国境だけあって、大型のトラックが集まっていて、意外にも賑やかだ。

みんな昼からビール瓶片手に楽しそうだ。
もちろん俺もビールを注文。出てきた瓶にそっと手を触れると、外の気温と同じく、生温い。冷たいのはないのかと店主に聞くと、太陽を指差して「これだからねー」のようなことを言う。

まぁいい。どうせ期待はしていなかったから。
向かいの店で、オムレツを買ってきてそれをつまみにゆったりと過ごそう。

その後、どうにかリカさんとも合流し、一緒に川の渡航地点へ向かう。

そこはこの間と同様、100mほどの川幅をイカダのような船が行き来していた。違う点といえば、今回はモーターがちゃんと動いていて動きが早いこと。

でもだからと言って、ひっきりなしに行き来するほどのやる気はないらしい。両岸とも待ってる車がいるというのに一向に動こうとしない。

しばらくしてると、そこらへんの人に「チケットは買ったのか?」と言われ、隆たちはまた街に戻るはめに。

そして、40分後、ちょうどもどってきたところに、ようやくボートがこっちまできた。着くと同時に男が数人おりてきて、準備満タンで待つデリカまですたすたと近づいてくる。

「おい、お前ら、金を今払ってもらうからな」

隆「チケットなら持ってますよ」

「関係ない。ここでも払ってもらう」

隆「でも、買った時に、これ以外は払わなくていいって聞いたんですけど」

「そうか、払わないんだな。じゃあ、また明日出直してきな!」

といって男は船にもどっていき、、あまりに一瞬のことに呆然とする俺らの前で船は引き返していった。

ちょちょちょーーー!!待ってくれよ!

しかし時すでに遅し。もう岸から離れたボートが戻ってくることはなかった。午後3時、あれが今日最後の便だったらしい。もう意味がわからない。くそったれだ

しょうがないので、街にもどり。今日はおわり。あ、そういえば、夜にたまたまコンゴ側から渡ってきたというアメリカ人バックパッカーに出会う。一緒に夕飯を食べていると、「コンゴの道はもうできてるよ。一日で首都までいけるよ」という衝撃的な情報を手にする。

うそだろ。俺らの心配をよそに、時代はどんどん先をいく。
気づけば空の雨雲もどこかへいったようだ。

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