2012年12月28日 林 季一郎

負の世界遺産ゴレ島で今も続く悲劇

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今日は、昼過ぎのフェリーでゴレ島に渡ることになった。

 

ゴレ島は世界遺産にも登録されている、セネガルでも有数の観光スポット。

でもそれは、昔この島で行われていた悲劇の歴史の遺産として。

 

フェリーに乗って10分程で島が見えてきた。

青空の下、青く輝く海面と真っ白なビーチ

ここがかつて奴隷貿易で栄えた場所とは思えない美しさだ。

 

ここゴレ島は奴隷貿易の中心地だったのだ。

 

だから、今目の前に現れた

漁村と見間違うような小さな島は少し意外な気がした。

でも、そんな穏やかなイメージも島に近づくと消し飛んだ。

 

あまりに衝撃的な光景が俺らを待ち受けていた。

船が岸壁に寄せようとしている時だ…

 

え!?

一瞬意味が分からない。

 

目の前の岸壁から、上半身裸の黒人の子供たちがどんどん海に飛び込んでいく。

それも本当にフェリーすれすれの所にどんどん突っ込んでくんだ。

もう何がなんだか、こっちは冷や冷やもんだよ。

 

 

はじめのは、ただ泳いで遊んでだけかと思ってた。

でも、よく見てるとどうも違うようだ。

 

泳いで船の脇に近寄ってきた彼らは

船の上の俺ら乗客を見上げながら何か叫んでいる。

 

両手を一杯に広げて、必死に何かを求めている様子から察するに

「え、もしかしてお金を欲しいと言っているのか…?」

 

何ていう光景だ…

 

船のデッキから海面までは5mほど

そこから俺らのいる2階フロアまではさらに数mある。

 

上から見下ろす観光客の俺らと

下で必死にもがく黒人の彼ら。

 

不謹慎なことを言うようだが

昔の奴隷市で売られる黒人の人たちと

それを遠くから見定める白人の商人たちの光景を思い浮かべてしまった。

 

と同時に、少し気持ちが悪くなってきた。

 

 

フェリーから誰かが小銭を投げ落とすと

みんなが一斉にそこめがけてダァー!っと潜っていく。

 

そして幸運にも探りあてた子は、その小銭を口にくわえて、

また手を振りながら、次のコインを要求してくる。

 

おいおい、ここは本当に世界遺産なのか。

こんなことが目の前で繰り広げられていいのか。

 

海中で器用に足を動かして浮かぶ彼ら

あたかも、海底深くからの見えない足かせに繋がれているように思えた。

 

自分でも何と酷いことを思うのかと、自分でも驚いた。

でも、これが現実なのだろう。

理想としての道徳心では、想定しえない事がここにあるのだと。

 

さすがに小銭を投げ落とす気になれず

何とも言えない後ろめたさを感じながら、そそくさとフェリーを降りた。

 

小さなビーチの横に作られた桟橋を通って島に足を踏み入れた。

やはり一見すると、普通の穏やかな漁村のようだ。

 

まずはビーチ脇の小屋で入島税なるものを支払う。

そうか、ここは世界遺産なんだっけか。

ついでにガイド代も支払い、ガイドの人について島をめぐる。

 

すごく丁寧に、そして感情のこもった説明をしてくれる。

そんな彼が、ポツンと漏らしたある言葉が印象的だった。

 

「奴隷貿易自体はもう無くなったかもしれない。

でも、それは形を変えてまだこの国に残っているのさ」

と悲しそうに話してくれた。

 

自分の頭の中にはさっき見た光景が焼き付いていた。

 

 

奴隷商人の館や、奴隷として連れてこられた黒人が収容された部屋などを見て回る。

そして、彼の好意で島の奥の方まで連れていってくれた。

そこには、かつて英国とフランスが戦った際の砲台などが残っていた。

 

その中に入ることもできた。

すると…

 

ガイドの彼:「ここは俺の部屋ね。でもって、隣が友達の部屋さ。」

 

え…

 

いや、どう考えても人が住むような場所ではない。

ましてや、世界遺産の公認ガイドが住むところでは…

 

森が開けた見晴らしのいい所だとは思うけど…

 

でも、ここ朽ちた砲台の中だよ!

 

日の光も当たらず、じめじめとして暗い。

そして、至る所が崩れ落ちていて、ゴミが散らかっていてとにかく汚い。

なんで世界遺産の認定ガイドがこんなホームレスみたいな生活を送っているのだろう。

 

これが現実なのか。

アウシュビッツとは次元の違う悲惨さに、気が滅入りそうだ。

だって、ここではまだ悲劇が目に見える形で続いている。

 

ガイドツアーの最後に彼に聞いてみた。

ずっと、奴隷貿易の加害者である西欧人と被害者である彼らの現在の関係が気になっていた。

 

俺:「今ここに白人たちが観光目的でやってくることをどう思う?」

 

彼:「今の世代の彼らは全く恨んでいないよ。

今の彼らには関係ないからね。でも国としてのイギリスはやっぱり嫌いかな。」

 

帰りの船の時間が迫っていた。

 

また船で帰る俺らと違って、

昔この島に連れてこられた人たちが、来た道を再び戻ることはなかった。

その道を俺らは日帰りで戻っていく。

 

あまりにも現実味がないことで、どう思ったらいいのかも分からない。

それでも、もう帰りの船に乗ってしまえば

もう今見たことを忘れて、三人で明日以降どうするかの話をする。

 

日本人の俺らにとってのこの場所は

結局、なんだかんだ言っても他人事なのかもしれない。

 

 

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